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節税は情報商材みたいな話だということ

皆さんこんにちは「節税」って魅力的な響きがありますよね。

「なぜITのココロファンのブログで税金について取り上げるの?」と聞かれたことはありませんが、
それは、中の人の仕事が税金関係だったことがあるからという単純な理由です(笑)

以前は国際税務の一分野のコンサルタントとして勤務していました。
こういうニッチな税務は大企業をクライアント(顧客)にしたすごく狭い業界です。
(そしてこの業界はカタカナ文字が多いのが特徴です)

その当時は時には出張で福岡や広島や山形などにでかけたり、
それなりに担当案件が多かったので終電は普通、時々朝まで仕事をしていました。

専門家としてやりがいを感じる仕事ではあったのですが、高すぎる専門性がネックとなり、
結果的にいろいろな面恵まれた環境ではありましたが3年で卒業しました。

税金というと節税という言葉の印象のように俗っぽいところがありますが、
昨年流行していたMMT等の新しい経済理論でも貨幣の根本的仕組みの土台です。
だから個人的な関心としては国家の徴税権というものについては興味深く感じています。

そんな税金に興味がありかつ業界を知る私から見て「節税」はどう見えるのかというと、
実は「大したこと無い」ということです。
両手を上げて全員におすすめできるものはほぼ無いのです。

確かにうまく行けば十分節税効果が出ることもありますが、
うまいこと行かないと大した効果が出なかったり、そもそも保険のように、
ご自身がどれくらい商品に価値を見出しているかによって価値が変わる場合もあります。

大したこと無いと言いましたが、確かに個人の所得として、
数百万円程度節税っぽいことが出来たとしたらかなりすごいですよね。
しかし、よく考えると費やす機会費用(経済学上のコスト)を考えると微妙だったりします。
節税って情報商材並みになんとも言えない幻惑的なものなのです。

ということで今回は税にスポットを当てて、どういう勘違いが多いかをご紹介します。
多くの方は経営に関するお金の問題についてあまり知らないと思いますので、
まずは、簡単に会社(法人)の税金と資金繰りについてご紹介したいと思います。

 

人の目があるところでは真面目な日本企業

 

法人税というのは法人の利益(経常利益)に対して30%程度の税率で課せられる税金です。
1000万円の利益が出たら300万円を税金として収めるということです。

株主への配当等はこの税引き後利益(当期純利益)の中から行われますから、
当然、税金はなるべく払わずにした方が手元に残る資金としても増えるというわけです。

意外かもしれませんが日本の上場企業においては、
法人税について節税する姿勢を良しとしないところがあります。
基本的には国税庁の言うことを聞くことが多いのです。

一方で非上場企業の多くは節税にせっせと励んでいるという印象があります。
個人事業主の方々の多くも「経費に計上して〜」みたいな感覚の人が多いように思います。

合法的な節税については当然に全く問題あることではありません。

しかし、諸外国では「いかにルールに則って税負担を最小化するか」という知的バトルが、
税務当局と企業の間でバチバチに行われている様子を実際仕事で見てきたので、
「日本の大手企業は本当に真面目だなぁ」とすっかり感心していました。

でも、日本人は税金に対しては本音では払いたくない、嫌っているにもかかわらず、
人の目があるところではしっかり言うことを聞いてるふりをしているんじゃないかと思うのです。

ルールを守っていればギリギリまで攻めてよいという姿勢の欧米企業は、
法的には問題ない一方「それはやりすぎ!」と思うところもなくはないのですが、
なんだかそれはそれで合理的なのでスッキリとしていると思います。

一方で、世間の目がちゃんと行き届いているところでは真面目な日本人も、
バレなさそうなところではケチケチと節税に励むという印象があります。

 

資金繰りを制するものは会社のお金周りを制す

 

会社を運営してみると会計や税務を勉強していても新しい発見があります。

例えば意外と思いがけないところで資金が必要な場合があります。これは「資金繰り」と言われるものです。
これは一般的なパーソナルファイナンス(家計)の感覚ではわかりにくいところがあります。

例えば普通に考えると、売上が上がるとすぐにお金が入ってくるイメージがありますが、
企業間取引ではそのほうが稀です。多くは「売掛金」という債権の形となり、
回収には仕事を終えても30日後、長い場合は60日場合によってはそれ以上必要だったりします。

また消費税は「預かっている税金」になるので消費税分を請求しても、
結局年度末に預かった分の消費税は税務署に納めることになります。

このように実質的なお金と名目上のお金の動きが異なるのが法人の資金繰りです。
家計簿の感覚だと毎月必ず入金があるので支出をコントロールすればある程度管理できますが、
法人の場合は取引先の条件や法律との兼ね合いでお金の動きが不規則になります。

そうしたことがあるのである程度会社に資金を持っていないと、
資金繰りが苦しくなり会計上黒字であっても倒産してしまうことになります。

そして、その資金繰りの影響が予想していたよりも大きいのが現実の会社運営です。
頭ではわかっていたのですが実際には計画通り進捗することが無いこともあります。

例えばコロナショックに対してもどれだけバッファがあるのか、
掛けていたレバレッジがどれだけ影響を与えるのかを考えないと、
一気にハイリスクな資金が必要になったり、調達コストが増加します。

逆に守りに入りすぎても、銀行から必要ない融資を受けすぎるのも、
日々必要ないコストを払うことになります。

安全運転をしながら手元に自分たちが自由に投資できる資金を確保するにはどうするか、
これこそが企業の資金繰りであり、ファイナンスと呼ばれる仕事になります。

 

本当に美味しい節税策はあるの?

 

さて、そんなところで話は戻ってきますが、経営者に魅力的に見えるのが「節税策」です。

冒頭も申し上げたとおりですが、正直節税に励む労力をかけるくらいなら、
事業を成長させたほうがよっぽど手元にお金が残るわけです。

節税策というのは巷に溢れている通りまったくないわけではありませんが、
あくまでちょっとした優遇が得られるだけという程度で、
きちんと手続きさえ行っていればあえて「節税」を名乗るほどのことではありません。

そして、何より成長を阻害するほどの重税がのしかかるようなことは極めて稀です。
(正しい申告をしなかったことによる追徴はありえますが)

また、中小企業のできる節税策というのは大したインパクトはありません。
一般的に想定される世の中の節税策の多くは「無駄遣い」に分類されます。

それに、先程資金繰りにも不確実性があるというお話をしましたが、
節税の前提になっているのは都合よく経営が安定している会社です。

今後も少ない従業員でこのまま安定的に同じことをやっていくだけというのであれば、
少しでも利益の最大化するためにセコセコと節税に励むのもわかりますが、
ビジネスを拡大していこうというのに節税のことを考えるのは時間の無駄だと言えます。

そうならば、無駄なお金を使わずに利益を生み出すために資金を投入し、
さらに必要な資金を営業や財務で資金を調達することに専念すべきです。

チャンスを狙っていくことが結局会社の成長につながるのであって、
決して損金算入を増やすために帳尻を合わせることではないのです。

 

本当の節税ができるのは超エリート企業のみ

 

でも、確かに効果の高い節税策が世の中に存在しないのかというとそうではないんですね。

例えば国際取引面で税務のメリットを戦略的に狙うと大きなインパクトがあります。
皆さん一度は聞いたことがあるかと思いますがEUの「デジタル課税」は主に、
GAFAと呼ばれるGoogle、Apple、Facebook、Amazonの税逃れに対する対抗策です。

これはグローバル企業が法人税率差や租税条約を利用して無形資産等の保有と管理等で、
低税率国に所得を集めていたことに対してEU諸国が対抗したことに始まりました。

例えば2019年のAppleは595億ドルの経常利益を上げていますが、
ここに対して例えば40%の税金が掛けられると238億ドル支払うことになります。これは莫大な金額ですよね。

しかし、例えば少し前までは無形資産等収益の源泉が低税率国にある場合、
ロイヤリティ支払い等で収益を移転することが可能でした。これを「租税回避」といいます。
この事自体は法律のある意味抜け穴を活用したもので違法ではありません。

低税率国に所得が移転することでグループ全体での実効税率は抑えられます。
結果的に数百億円、数千億円の現金が増えるわけですから税務戦略は大変重要になります。
もちろん、国側も税法改正で抜け穴を防いでいますがいたちごっこです。

ただ、ほとんどの人にはこうした話は雲の上の話に聞こえるように、
高度な税務戦略は個人事業主や中小企業はこうした取引は行われません。
行われていたとしても絶対額でインパクトが小さいので検討する必要もありません。

結局の所、世界に影響を与えるレベルの企業ができる節税は大きな影響がありますが、
目先の節税に頭をつかっている企業はちょっとした生活費程度の得にしかなりません。

一方で、グローバル企業は事業を成長させるために資金を有効に使って、
戦略的に本社機能を移転させたり、重要な価値の源泉をどこに配置するかを考えています。

経営においてもこうしたステージに行く前に会社の事業成長が小さくまとまってしまえば、
最終的に節税できる額はもちろんのこと戦略の幅からして違ってくるのです。

 

まとめ

 

ということで、今回は中小企業の節税策は情報商材のようなものというお話をしました。
情報商材というのは何らかの役に立つ情報を有料で手に入れることです。

情報というのはその質も当然ですが当人が実行できるかどうかが重要です。
節税も税理士や会計士が提供できる情報はあくまで合法的な情報提供であって、
完全にアウトな節税策は自分の責任になるためアドバイスはしません。

つまり、一般的な節税策にウルトラC的な作戦があるかというとあることはあるけれど、
それを検討するために要した費用(時間)を考えると大きなインパクトにならないことが多いです。
もし、大きな節税効果が確実に期待できるという税理士がいたら、
危ない橋を渡っている可能性が高いので注意しましょう。
(個人事業主の方で自宅件事務所家賃を全額経費計上するとか結構危ないですよ・・・)

一方で、国際税務においては国際法は国内法の上位に位置づけられるため、
問題解決にはその法律解釈含め国家間の対話が必要になるため、
普通の税務調査のように単純に国内法の適用を行うことが困難になります。

つまり、調査にも極めて大きなコストと時間を政府当局にも強いることになるため、
こうした国際税務の調査は国税局でも一部のチーム、
案件によっては国税庁の中でも専門部隊が担当する大きな案件になります。

特に大企業や資産家など大きな資金を動かせる人はこの国境をうまく使った租税回避を行ってきました。
しかし近年ではBEPSと呼ばれるこうした租税回避行為は国家間の協力体制が整い始め、
少しずつ法の網が掛けられてきました。

例えばお金持ちの一般的な節税策だったタックスヘイブンを活用した税金対策も、
「タックスヘイブン税制」という法律が出来たことで有効ではなくなりました。

まだまだ法の抜け穴がないわけではありませんが、少なくとも国内でできる節税というのは、
その労力に比較するとものすごく大したことがないことが多いです。

もし、税金についてもっと知りたいという方がいましたら社内で気軽に声をかけてくださいね!